総合型入試での大学受験
もう平成時代の初期のころの話になりますが、類塾で教師をしていたころ毎年毎年トップ校への進学を目指してやってましたが、これもほとんどが北野高校に進学していくというお馴染みパターンに飽きていたころ、海外の子供達が日本に帰国するとき、進路や受験でかなり苦労しているということを耳にしました。その当時私は国内ではやれることはやったしステータスもいただいていたので、もうこれ以上やっていくだけの情熱を失っていた時期でしたので「帰国生の指導」という未知のものに非常に興味を覚えました。そこで「帰国生」という語にアンテナを張っていると塾関係の方から東京の「富士学院」という学習塾が「帰国生専門の塾を開講していて、今回大阪の西区に帰国生専門塾として「富士国際教育アカデミー」を開くことを計画していると教えてもらいました。確かめてみると情報は性格で「今その塾の責任者を求めている」ということも分かりました。また、大阪には、もう一つ帰国生専門塾があるということもわかりました。興味があったので紹介者を介して会ってみました。帰国生の困っている状況や日本での受け入れ態勢がまだまだ不十分だということもわかりました。私で良ければお手伝いをしたいということで転塾をすることになりました。給料は半分以下になりましたが未知の世界への魅力の方が勝ってましたので迷いはありませんでした。開塾に当たり関西の国際系の各大学の先生たちや高校生の帰国生受け入れ学校の先生たちを招いて開塾の趣旨と現状での帰国生達の状況なども理解していただけるように講演をさせていただいてスタートとなりました。
一概に帰国生といっても事情は国ごとで異なり、例えば日本の教科書を基準にしてもみんなそれぞれ習っている分野と習っていない分野がまちまちで、習っていない分野は当然知らないからできません。それを事情を知らない方は「できない子」というレッテルを学校で張られているということもわかったし、帰国生達も随分かわいそうな思いをしてるんだなぁと思ったりしました。国公立の大学は国内の日本人と同じ条件で受験しなさいということだったので話にならなかったです。
こういう状況においてどのように教えたかといえば、例えば高校受験だとだいたい夏休み後半位に日本に戻って来て日本の学校への入学手続きをします。それで塾通いをします。私が担当したのは「同志社国際高校 15名 関西学院大学付属高校 2名 慶応女子高校 1名 西大和高校 2名 の20名の数学を担当する」ということとでした。そして9月~11月にかけて3学年の5科目の授業を総ざらい学習を最初から教えていくという方法でした。授業は朝9時~夜10時まで(昼休憩はあります)この間学校には事情を話してもらって休校してもらってました。こういう体制で教えていくうちに1ヵ月もしないうちに先生間の指導力の違いで生徒たちの親御さんや他の科目を教えている先生から「すべての科目を中辻先生に担当してもらいたい。」との要求を受けました。過去にも同じようなことがあったので「やっぱりなぁ~」とは思ったので全部引き受けることにしました。朝10時~夜10時までしんどい時は家に帰らずに近くのホテルで泊まるという条件でこの子たちと受験体制を組んで勉強しました。結果的にはむちゃくちゃおもしろかったです。しんどそうな顔してたら後ろで見学していたお母さんたちが「頑張って~」なんて声掛けしてくれるのでなんともいえない楽しさで無事受験を終えました。生徒たちは全員志望高校に合格しました。
帰国生の塾を経験して後、私は塾とは全く関係のない会社経営を行うこととなりました。その間は塾のことはすっかり忘れていて、次に塾のことが身近になったのが家族そろって子育てでアメリカで暮らしていた時でした。そこで知ったことや学んだことを書いていきたいと思います。
アメリカの大学入試制度
アメリカで大学入試を行うには主に
①推薦制度と②SAT(全米統一テスト)があります。
①推薦制度は学校の勉強をしっかり学習して日本で言う内申書の得点を上げて学校か
ら推薦をもらって大学に入る方法です。
②SAT方式は全米で行われる統一テストの合計点で自分が入れる学校群がわかりま
す。その範囲の中で大学の教育方針や大学でのやりたいことと大学側が学生に望む
ことなどを受験生と大学側との間で面接が行われ、両者の考えや意見が合致し大学
側はこの学生にぜひ入学してもらいたい、受験生もこの大学にぜひ入学したいとな
って入学となります。
また、SATは年に複数回受験可能だし各大学にもよりますが、そのテストの科目ごとの高得点をそれぞれ集めて合計点を提出しても良いという学校もあります。
日本の大学入試制度もアメリカの入試制度に習ったものに集約されていくと思います。最初英語は外部テスト利用で始めようとしましたが色々な利権が絡むようで今はまだはっきりと決まっていません。私立大学はそれぞれの学校が基準を設けて外部テストの得点を設定しています。国公立大学は完全に遅れてますのでこれから進んでいくようです。
当塾ではほぼほぼ総合型入試を採用しています。もう随分と長くやっていますのでノウハウは知り尽くしています。
日本の受験スタイルは①従来型のように点数だけで合否が決まる方法
②学校の勉強をしっかりとこなし高い内申点獲得して指定校推
薦を勝ち取るという方法
③総合型入試の方法
大学が設けた条件をクリアした生徒が「志望理由書」や
「小論文」「ディベート」「面接」による総合判定で決ま
る方法
④スポーツ推薦による方法
⑤AO方式の「何かに頑張って来てその才能が認められた」と
いう方法
⑤の方法は途中退学者も多いので合格人数はかなり絞っています。④は今後もこの形は継続します。①の方法は年々縮小されていきます。
一般入試と総合型入試は求められている者が全く違うので両者を比べて賢いだのバカだのという談義は全くナンセンスといえます。一般入試では偏差値というものが重要となると思いますが総合型入試ではそれにかは関係ないものです。したがって一般入試の偏差値を持ち込んで総合型入試は云々を評価するのは無意味です。